【3672】 ◎ アキ・カウリスマキ 「真夜中の虹」 (88年/フィンランド) (1990/09 シネセゾン) ★★★★☆

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「労働者3部作」第2作。ハードボイルドロマン? 切なさと希望の映画。

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「真夜中の虹」トゥロ・パヤラ/スサンナ・ハーヴィスト/マッティ・ペロンパー
「真夜中の虹」00.jpg「真夜中の虹」01.jpg 北国の炭鉱が閉山し失業したカスリネン(トゥロ・パヤラ)。「南へ行け」と父からキャデラックのコンバーチブルを譲り受けた。父は拳銃自殺した。旅の途中二人組の強盗から有り金を全部奪われてしまう。辿り着いた港で日雇い労働者として働き出す。駐車監視員のイルメリ(スサンナ・ハーヴィスト)から違反を見逃してもらったかわりに食事をご馳走した。その夜彼女の家でベッドを共にした。翌朝寝ていると息子のリキ(エートゥ・ヒルカモ)に起こされ「仕事に行かないの?」と尋ねられる。シングルマザーのイルメリはいくつかのバイトを掛け持ちしていた。カスリネンは街に出て仕事を捜すがなかなか見つからない。安く泊まれる「教会宿泊所」を追い出され、やむを得ず父の車を売る。駅でシケモクを拾って火をつけようとしていたら強盗の一人を見つける。追い詰めたらナイフを出してきた。そ「真夜中の虹」04.jpgれを奪って床に押さえつけたところで警察が来た。強盗殺人未遂、凶器所持、公務執行妨害でカスリネンに1年11か月の懲役刑が下る。駅には不当逮捕を裏付けるであろう監視カメラがあったのに。イルメリと息子が刑務所に面会に来る。出所したら結婚しようと約束する。イルメリのことで侮辱してきた「真夜中の虹」05.jpg看守を殴り懲罰房に入れられる。イルメリとリキから差し入れのケーキが届く。ケーキの中には金鋸が入っていた。それを使い、同室者のミッコネン(マッティ・ペロンパー)と共に脱獄に成功する。売った車を取り戻し、イルメリを迎えに行き結婚式をあげる。カスリネン、ミッコネンは闇の業者に国外逃亡のための偽造パスポートを依頼する。業者から銃と車を借り、銀行強盗をして資金を調達する。ミッコネンが金のことで業者とトラブルになり刺される。それをみたカスリネンは業者二人を撃つ。ミッコネンを埋葬したあと、カスリネン、イルメリ、リキの3人は真夜中の港に停泊する貨物船アリエル号でメキシコをめざす―。

 1988年公開の、アキ・カウリスマキ監督の長編5作目で、「労働者(プロレタリアート)3部作」の第2作。仕事も家もお金も何もかも失った男が希望を求めて南へと向かう波乱万丈の旅を、カウリスマキ節というべき淡々としたタッチで綴っています(それでもカウリスマキ作品にしては"波乱万丈")。

「真夜中の虹」06.jpg 「ハードボイルドロマン」という触れ込みもあり、確かに「脱獄」を描いた箇所もありますが、誰かが言っていたように、ティム・ロビンスの用意周到さも(「ショーシャンクの空に」('94年/米))、スティーブ・マックイーンの華麗さや過酷さも(「大脱走」('63年/米)、「パピヨン」('73年))、クリント・イーストウッドの執念も(「アルカトラズからの脱出」('79年/米))、その何れも無い緩~い感じの脱獄でした(笑)。これがまたアキ・カウリスマキ監督らしいのですが、でも「レザボア・ドッグス」('92年/米)みたいなところもあって、一応、ハードボイルドなのかも(主人公はほとんど表情を変えず淡々としている点でもハードボイルド? だとしたら、カウリスマキ作品はどれもハードボイルドだとうことになってしまうが)。

「真夜中の虹」03.jpg カウリスマキ監督作品の常連マッティ・ペロンパーが演じる、主人公と刑務所で同室の男ミッコネンが良かったです(主人公が監房に入ったとたんに彼がいて、マッティ・ペロンパー、どんな役でもやるなあと(笑))。最初は不愛想で脱獄にも乗り気でなかったように見えましたが、実は同じような思いを秘めていた。共に脱獄した後は、カスリネンとイルメリの結婚式の立会人を務めたりもします。もう一人の立会人がそこらの警備員か何かなのが可笑しいですが(こうしたユーモアがカウリスマキ監督らしい)。
真夜中の虹 [VHS]
「真夜中の虹」v.jpg そのミッコネン、最後は、偽造パスポートの闇業者がカネを総獲りしようとしたことに抗って刺されてしまい、貨物船「アリエル号」で逃避行にタ旅立とうとするカスリネンらに対し、(自分の死体を)ごみ捨て場に埋めてくれと言うのがあまりに切な過ぎました。〈自由〉の夢はカスリネンら3人に託したということでしょう。

 カスリネンらが港について初めて船の行き先がメキシコであることを知るというのも、彼らの計画がかなり大雑把であったことを物語っていますが、「メキシコ」というのは、中盤のミッコネンがカスリネンに話した逃亡先の候補の中にありました。理想的だが行くのに金がかかると(物語としてはちゃんと伏線とオチになっているわけだ)。

 ラストに流れる「オズの魔法使い」('39年/米)のテーマ「虹の彼方に」が、映像的にもテーマ的にも作品にマッチしていて、アキ・カウリスマキ監督の音楽センスの良さを感じました(ウォン・カーウァイ監督が「欲望の翼」('90年/香港)でロス・インディオス・タバハラスやザビア・クガートの曲を使ったのを想起した)。原題は「アリエル」ですが、「真夜中の虹」という邦題は上手い付け方だと思います。

 イルメリの息子リキは賢くて強い子でした。幼い頃にこうした経験をした子は、メキシコの地でどんな大人になるかなあ。母親を支え続けるのは間違いないでしょう。切なさと希望の映画でした。

「真夜中の虹」●原題:ARIEL●制作年:1988年●制作国:フィンランド●監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ●撮影:ティモ・サルミネン●音楽:ヨウコ・ルッメ●時間:73分●出演:トゥロ・パヤラ/スサンナ・ハーヴィスト/マッティ・ペロンパー/ エートゥ・ヒルカモ/エスコ・ニッカリ●日本公開:1990/09●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-11-19)(評価:★★★★☆)

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